本ホームページは、1996 年に町田洋東京都立大学名誉教授より東京都立大学理学部地理学教室(現、首都大学東京都市環境学部地理学教室)が寄贈を受けた国内外のテフラ(火山灰)試料(一部)の目録からなります。目録の公開は、これらの試料が標準試料として研究を目的とした国内外の研究者に配付されることを前提にしています。
スチロールビンに保存されたテフラ試料
「テフラ」は火山の爆発的な噴火によりもたらされるもの、すなわち火山噴出物です。その語源は「灰」を意味する古代ギリシア語にさかのぼります。大規模な噴火の場合、テフラは給源火山から数10〜1,000 kmの遠隔地にまで拡散し、地表・海底を広く覆います。その運搬・堆積自体は地質学的時間からみればほぼ瞬間の出来事です。こうした性質を利用して、堆積物(地層)となったテフラは、過去の時間面を示す鍵層として利用することができます。このため、火山学・地形学・地質学・地震学・考古学など、過去の事象を扱う研究分野で広く利用されています。このような手法は火山灰編年(テフロクロノロジー:tephrochronology)と呼ばれています。火山国である日本には多数のテフラが分布し、これらを用いた研究が盛んに行われています。またテフラは火山噴出物でもあるので、それ自体をもたらした噴火や火山の研究にも応用できます。世界的にも火山灰編年学とそれを取り巻くテフラの研究は長く、現在も盛んに研究が進められています。
日光,男体山より1万5千年前に噴出した男体今市テフラ(橙色
)と男体七本桜テフラ(
黄色).
標準試料の保管や配付はテフラ研究において重要な意味を持ちます。なぜならばテフラを対比・認定する際、模式地で採取された標準試料との比較が重要だからです。にもかかわらず模式地が工事や植生の繁茂により消失する場合が多く、標準試料の入手が困難であることが珍しくありません。したがって日本国内におけるテフラのデータベース化やその標準試料の整備は必要とされています。しかしながらこれまで充分に行われていません。その様な状況を踏まえて本ホームページを立ち上げました。本学では伝統的にテフラ研究が盛んであり、大学が所有する試料の中には模式地で採取された試料も多く含まれています。その様な試料のうち、2015年3月までに広域テフラ:382点、ローカルテフラ:318点の目録作成が完了しました。これを受けて広域テフラ試料の配付を目的に2015年11月に広域テフラの試料名・試料採取地を公開するに至りました。
謝辞
※本プロジェクトは首都大学東京 傾斜的研究費「学術成果の都民への発信拠点・組織の形成」(2012〜2014年度)による学内標本データベース構築作業の一環として実施されたものです。学内の関係者をはじめ目録作成にかかわった多くの大学院生・学部生により公開に至りました。