■テフラ試料の背景:首都大学東京傾斜的研究費「学術成果の都民への発信拠点・組織の形成」

2012〜2014年度首都大学東京傾斜的研究費「学術成果の都民への発信拠点・組織の形成」の研究活動の一環として、町田洋東京都立大学名誉教授が1996 年3 月に退職にされた際、本学地理環境コース(当時、東京都立大学理学部地理学科)が寄贈を受けた国内外のテフラ(火山灰)試料の目録が作成されました。
それらは本学の町田名誉教授が在職中に収集した多数のテフラ試料からなります。同教授が収集した試料の大半は神奈川県にあります相模原市立博物館に提供されましたが、なお重要な試料については本学都市環境学部地理環境コースの実験室(8 号館286 号室)に収納されたままでした。本研究プロジェクト「学術成果の都民への発信拠点・組織の形成」では、学内に埋もれた貴重な学術資料を見いだし、データベース化等の整備を行うことをめざしその一環としてテフラ試料の目録整備作業が実施されました。

■テフラ試料整備の概要

テフラ試料の整備は、電子データベースによる目録作成、テフラ試料のケース詰め(当初、試料は採取時使用のビニール袋に封入されている)、ケースへのラベル貼付からなり、最終的にテフラ毎に収納ケースに収められました。将来的にはテフラ試料の洗浄、試料の岩石記載データ(斑晶鉱物の組合せの記載、屈折率測定や火山ガラスの化学分析測定など)の取得などを予定しています。同時に目録や岩石記載データの電子データベースをweb 上に公開することも重要な目的です。最終目標として、研究を目的として試料入手を希望する研究者に、標準試料の提供準備をめざしています。試料数はおおよそ700 点を超えており、最終的な作業の完了には最低でも数年間は要します。




IMG_0647_forHP.jpgラベル.jpgtrimmedラベル火山灰試料150121 のコピー.PNG図4棚への収納 のコピー.jpg

■データベース化作業過程


2013年度はテフラ試料目録作成の初年度でもあるため、具体的な作業内容は試行錯誤的に進めた。作業は学生・大学院生を臨時職員(アルバイト)として採用し、おおよそ8 ヶ月間にわたり1 週間に1 人・日程度のペースで進めた。
目録作成は試料を含んでいるサンプル袋の記載事項を読み取り、1 試料毎にMicrosoft Excel のファイルにそれらを入力した。ファイルは広域テフラとそれ以外のローカルテフラに分けた。広域テフラであるか否かの判断は「新編 火山灰アトラス」(町田・新井、2003;東京大学出版会)に準拠している。記載項目は当初、作業日・整理番号・試料番号・記載名称・テフラ・採取地点・採取日・層位などのコメント・余剰分の有無・備考の10 項目としたが、後半の作業からは作業日(J)・整理番号(J/E)・試料番号(J)・記載名称 (J)・略称テフラ(E)・正式テフラ名(E)・正式テフラ名(J)・採取地点(J)・県(J)・市町村等(J)・字名等(J)・県(E)・市町村等(E)・字名等(E)・採取日(J)・層位などのコメント(J)・余剰分の有無(J)・備考(J) の以上18 項目と大幅に追加した(J は日本語表記,E は英語表記)。
Excel ファイルへの入力と同時に、120ml の透明スチロール棒ビンを収納ケースとして試料を封入し、仮番号をケースに添付した。なお、元のサンプル袋に記載されている文字が判別不可能な場合もあるので、鈴木による確認や、随時まとめて町田名誉教授への確認依頼を実施した。その際に記載項目となる、採取地点、採取日、層位などのコメント、備考欄についても追加入力を依頼した。2013年度末の時点で、広域テフラで390 件、ローカルテフラで318 件のテフラの最低限の情報が入力され、追加情報依頼、採取地点記載の整備(市町村合併以後の表記とする)、英語表記化が進行中であった。

2014年度は、以下の作業を実施した。作業は学部生を臨時職員(アルバイト)として採用し、6ヶ月間にわたり2〜4日間/月程度のペース(合計96時間)で進めた。

 1)昨年度Excelファイルに入力されたデータの再構築と不備項目の補完を行なった。
昨年度末の段階で進行中であった、追加情報、採取地点記載の整備(市町村合併以後の表記とする)、英語表記化は、広域テフラ・ローカルテフラ双方でほぼ終了した。ごく一部、元のサンプル袋に記載されている文字が判別不可能なものについて再度町田名誉教授に確かめた。その結果、幾つかの広域テフラ試料について由来不明なものや、誤って入力されているものがあることが判明したため、それらは除去し場合によりローカルテフラの範疇でカタログ化することとした。このために昨年度の段階で、広域テフラ:390件、ローカルテフラ:318件であったが最終的に広域テフラ:382件、ローカルテフラ:318件となった。

 2)確実なデータベース化を実現化するため、広域テフラの作業を優先した。まず25の広域テフラについてテフラ毎に整理番号(略称テフラ名+枝番号)を与え、スチロール棒ビンに整理番号ラベルを貼付した。この整理番号は最終的なものと考えている。なお今後試料が追加された場合、単純に枝番号を増やすことにより対応する。

 3)広域テフラのExcelファイルはデータベース管理効率化のため、データをFileMaker Proに移し替えた。

 4)FileMaker Proからケース添付用ラベルを印刷し、スチロール棒ビンに添付した。添付ラベルはエーワンラベルシート(型番31070)を採用した。添付ラベルイメージは図のとおりである。

 今後の検討課題として整理された試料の保管形態や、データベースの公開方法がある。試料の性格上、今後大幅に試料点数が増えることは考えられないのでデータ更新の心配は少ない。その分長期にわたり管理され、散逸しないような体勢づくりが必要と考えられる。スチロール棒ビンに保存される試料は既存の棚に収納して保存するのが適切と判断するが、棚自体を引き続き8号館286室に設置するか、91年館(学内の別棟)等の施設を利用するかは検討課題である。